院内ブログ

【症例紹介】 チェリーアイ (第三眼瞼腺脱出) の整復術を行いました

みなさんこんにちは。
まだまだ残暑が厳しい季節ですね😥💦
水分補給やクーラーの使用など、適切な熱中症対策を行い
暑さを乗り越えていきましょう🐾


さて、今回はチェリーアイについてです。
犬や猫の目には上下のまぶた以外に、目頭にも薄い膜のようなまぶたがあります。
普段は下のまぶたに隠れていて見えませんが、涙の分泌において重要な役割を担っています。
このまぶたを瞬膜、もしくは第三眼瞼と呼びます。

チェリーアイは、この瞬膜に存在する瞬膜腺が下のまぶたから飛び出してしまう病気です。
飛び出した瞬膜腺は赤く腫れ、サクランボのように見えるため、チェリーアイと呼ばれます。
片目に生じる場合と両目に生じる場合があり、2歳までの若齢犬で多い疾患です。

今日はチェリーアイについての解説と、実際に当院で行った手術についてお話ししたいと思います🍀

チェリーアイの原因
はっきりとした原因は明らかになっていませんが、
瞬膜周辺の結合組織が遺伝的に弱いことが関係しているのではと考えられています。
この病気は猫よりも犬に多く、特にアメリカン・コッカー・スパニエル、ペキニーズ、チワワなどによく見られます。(他の犬種でも発生します。)

症状
チェリーアイの症状は特徴的で、目頭に赤いものがついているorとびだしているように見えます。
炎症により白目の部分も赤くなったり、
違和感から目をこする、しょぼしょぼさせるなどの仕草が見られたりもします。

黄矢印部分: 赤くとびだした瞬膜腺

診断方法
チェリーアイは見た目が特徴的なため、比較的容易に診断が可能です。
目を気にしていたり、流涙や目やにが酷かったりする場合は
角膜に傷がないかの確認(フルオロセイン染色)を行うこともあります。

治療方法
症状が軽い場合は、消炎剤の点眼などでとびだした瞬膜腺が元に戻ることもあります。
しかし再発することが多く、根本的な解決には外科的治療が不可欠です💪

手術法は一昔前まで、とびだした瞬膜腺を切除する方法がありました。
しかし瞬膜腺は前述の通り、涙の産生に大きく関わっています。
なので切除すると重篤なドライアイを引き起こします⚡
そのため現在では瞬膜腺を温存する方法が一般的です。

瞬膜腺を残したまま治療するには、
●アンカー法(瞬膜腺を元の場所に戻し、近くの組織に縫い付けて固定する)という術式と、
●ポケット法(瞬膜に切れ込みを入れてポケットを作り、その中に瞬膜腺をしまう)という術式があります。

近年では術式の難度や再発率の低さからポケット法が採用されることが多いです。
(症状や患者さんの性格・特性により総合的に決定されます。)


実際の症例
患者さんは生後7ヶ月のMIX犬(ペキニーズ×マルチーズ)、女の子です。
眼が腫れているという主訴で来院されました。
最初は抗生剤や消炎剤の点眼で治療をしていましたが、
徐々に腫れがひどくなってきてしまいました。

そこで避妊手術と同時に、チェリーアイの整復手術を行うことになりました。

before

こちらが術前の様子です。
下の瞼を牽引し、飛び出した瞬膜腺を露出させています。
水色の円の中が、飛び出している瞬膜腺です。

after

術後です。
飛び出していた瞬膜腺の上下に切れ込みを入れ、縫い合わせました。
また、再発を防ぐため、しまいこんだ瞬膜腺は縫い付けて固定しています。(ポケット法とアンカー法の組み合わせ)
瞬膜腺は無事しまいこまれていることが分かります。

さくらんぼのように飛び出していたチェリーアイはすっかりなくなりました!
眼周囲の腫れもなく、とても綺麗です。
術前の写真と比べると、すっきりしているのがよくわかります😊

退院後は抗生剤とヒアルロン酸(目の保護のため)の点眼をしていただきました。
術後8日目に術後の再診を行い、多少の目ヤニはあったものの経過は良好でした✨
術後21日目には目ヤニもなくなり、右目はすっかりよくなっていたため、治療終了としました😊

まとめ
今回はチェリーアイの手術についてお伝えしました🐶
チェリーアイはすぐに視力や命に関わる問題ではありませんが、
放置すると乾性角結膜炎(ドライアイにより角膜に傷がついたり、結膜炎を起こしたりする)のリスクが高まる、目の違和感からQOLが低下するなどの問題が生じます⚡
眼の手術と聞くと少し身構えてしまう方もいらっしゃると思いますが、
基本的には日帰りで行うことができ、手術時間もあまりかかりません😊

チェリーアイや、その他眼科疾患でお困りの方は是非一度ご相談ください🐾